名古屋市障害者支援課より「障害福祉サービス事業所における建築基準法の適用について」の通知が出されて以降、事業所の規模に関わらず、建築基準法の遵守が徹底されています。
床面積が200㎡を超える場合の「用途変更の確認申請」が必要なのは当然ですが、200㎡以下の場合であっても、建築基準法(防火区画、内装制限、避難経路、階段寸法等)の基準そのものは完全に適用されます。 そのため、名古屋市からの通知に基づき、指定申請等の審査において建築士による法適合確認が求められています。
現在、実務に携わる専門家の方々や、すでに共同生活援助(障害者グル-プホーム)を運営されており、新たに次の事業所展開を検討されている事業者様 また新規の事業者様から、法適合に関するご相談を多くいただいております。
そこで、具体的なチェックポイントや留意すべき法規について、以下の通りまとめました。
※ 本内容は一つの整理の考え方であり、必ずしも固定的な正解を示すものではありません。
※ 実務の蓄積や個別案件の検討を通じて、適宜見直し・改善を行います。
※ 専門家である建築士 建築基準法に関する特定行政庁 所轄消防本部と協議の上進めてください
共同住宅の一部を住戸から共同生活援助(障害者グル-プホーム)への用途変更しやすい物件について
一戸建て住宅から共同生活援助(障害者グル-プホーム)への用途変更では、建築基準法及び消防法への適合が必要となるため、既存建物の条件によって改修内容や事業性が大きく異なります。用途変更に伴う改修範囲や工事費を抑えるためには、現地調査の段階で法適合性や改修のしやすさを確認し、用途変更に適した物件を選定することが重要です。特に、次のような条件を満たす建築物は、比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
※ 本内容は一つの整理の考え方であり、必ずしも固定的な正解を示すものではありません。
※ 実務の蓄積や個別案件の検討を通じて、適宜見直し・改善を行います。
※ 専門家である建築士 建築基準法に関する特定行政庁 所轄消防本部と協議の上進めてください
延べ面積1200㎡以上の共同住宅
既存の共同住宅の一部を用途変更し、新たに共同生活援助(障害者グループホーム/消防法施行令別表第1(6)項ハ)を開設する場合、消防法施行令第21条に基づく自動火災報知設備の設置範囲の検討です。
通常の特定複合用途(16項イ)として一律に扱われた場合、建物全体の延べ面積によっては、共同生活援助の区画内だけでなく、関係のない他の全住戸内(既存入居者の専有部)にまで感知器の設置や配線工事の義務が波及することになります。しかし、既存の入居者全員と工事日時を調整し、住戸内への立ち入り許可を得て改修を行うことは、実務上極めて困難であり、現実的ではありません。
この実務上の課題を解消し、他住戸への工事の発生を防ぎながら用途変更を成立させるためには、消防法施行令第21条に規定される「その部分」という設置対象の解釈を活かせる、適切な規模の物件選定が不可欠となります。
事業計画(5〜6床規模)から要求される床面積はおおむね120㎡程度であり、これを他の住戸に影響させず、グループホームの住戸内と共用部のみの改修だけで済ませるためには、その10倍以上にあたるおおむね1,200㎡度以上の延べ面積を持つ共同住宅を選定することが、 比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
事業計画から要求される床面積
共同生活援助(障害者グループホーム(6)項ハ)の適切な運営と収支バランスを維持するためには、1ユニットあたり「5床から6床程度」の居室構成が標準となる。これに伴い、個室のほか共同生活に必要なリビングや水回り等の共用空間を含めると、必要となる床面積はおおむね100㎡〜120㎡である。
消防法施行令第21条第1項柱書の適用
自動火災報知設備の設置基準を定める消防法施行令第21条第1項の柱書には、「自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物 その部分 に設置するものとする」と明記されている。
この「その部分」という規定を適用するためには、同一建物内における共同生活援助の床面積の割合が、建物全体の用途判定に影響を与えない範囲に収まっている必要がある。
ここで連動するのが、同令第1条の2第3項に規定される、いわゆる「10%特例(みなし従属)」の基準である
(※具体的な適用要件や管理・利用の従属性の解釈については、各自治体の消防本部との事前協議が必要)。
従たる用途(共同生活援助)の床面積の合計が、建物全体の延べ面積の10分の1以下であれば、建物全体が特定複合用途(16項イ)として扱われる状態を防ぎ、建物全体の用途を維持することが可能となる。これにより、第21条第1項第1号ロ((6)項ハに対する一律の設置義務)の基準を、共同生活援助の用に供される「その部分(区画内)」だけに限定して適用させることが可能となり、他住戸への工事の波及を伴わずに手続きを進める可能性がある。
階段室型共同住宅の1階部分であること
共同住宅が「階段室型(各住戸へのアクセスが独立した階段を介する構造)」であり、その1階部分のみを共同生活援助(障害者グループホーム)へ用途変更する場合、消防法施行令第1条の2第2項に規定される「構造上及び機能上の独立判定」に基づくものである。
消防法施行令第1条の2第2項による用途の分離
同項では、1つの建物の中に複数の用途が存在する場合であっても、それらの区画が互いに「構造上及び機能上独立しているものと認められるとき」は、それぞれを「別個の防火対象物(別の建物)」として分離して扱うことができると定めている。 階段室型の1階部分は、上階(2階以上)の一般住戸へ向かう階段室や共用廊下と、1階の計画区画(住戸)がコンクリート床(界床)や耐火構造の壁等によって完全に遮断されやすく、かつ玄関ドアや避難経路も一般住人と完全に分離した状態を確保しやすい。この条件を満たすことで、法律上、上階の共同住宅部分と1階のグループホーム部分の縁を切ることが可能となる。
床面積にかかわらず用途変更を限定できる
上記の独立判定が認められた場合、2階以上の共同住宅部分は1階の影響を受けないため、既存の消防設備(共同住宅用自火報など)のままで維持され、他の住戸への波及工事は発生しない。
一方で、分離された1階の共同生活援助部分は、独立した「(6)項ハ」の建物として扱われる。消防法施行令第21条第1項第1号ロの規定により、(6)項ハ(入居施設)は床面積の大きさに関わらず一律で自動火災報知設備の設置が義務付けられているため、「その1階の区画内(住戸内と専用共用部)」にだけ自動火災報知設備を設置すれば、建物全体の総床面積に関わらず用途変更を行う可能性がある。
共同生活援助(障害者グル-プホーム)からのサテライトとする
サテライト型住居とは、本体住居と密接な連携(日常生活上の支援や緊急時の対応等)を取りつつ、利用者がより自立した生活を営むために設けられる、原則として「1人(特例で2人)」で暮らす独立した住居である。
このサテライト型住居を一般の共同住宅の一部に設置する場合、消防法上は、本体住居(6項ハ)の基準がそのまま適用されるのではなく、原則として「共同住宅の住戸 (5項ロ)」のまま扱われるケースが多い。
共同住宅(5項ロ) のままでの取り扱い
サテライト型住居は、厚生労働省の指定基準において以下の要件が求められている。
- 利用者は原則として1名(例外的に夫婦等の場合のみ2名)であること。
- 構造上、通常の一般住宅(アパート・マンションの1室)と同様に、独立した生活空間(専用の玄関、キッチン、浴室、トイレ等)を有していること。
消防法上、このサテライト型住居は「特定の福祉施設」というよりは、「支援を受けながら一般の賃貸マンションで一人暮らしをしている状態」と実質的に同等とみなされやすい。
そのため、入居者が1名であり、自立度が比較的高く、住戸内で完結した生活を送っている場合は、その住戸の用途は
共同生活援助(障害者グル-プホーム) (6) 項ハではなく、共同住宅の1住戸 (5)項ロ のまま維持される判断が
一般的である。
3階以上の階でのメゾネット型住戸でないこと。
メゾネット型住戸は、竪穴区画や避難計画への影響が大きく、用途変更に伴う改修が増える可能性があるため、3階以上にメゾネット住戸がない100㎡以下の物件が望ましい。
直通階段の規定
第123 条の2 主要構造部を準耐火構造とした共同住宅の住戸でその階数が2又は3であり、かつ、出入口が一の階のみにあるものの当該出入口のある階以外の階は、その居室の各部分から避難階又は地上に通ずる直通階段の一に至る歩行距離が40 m以下である場合においては、第119 条、第121 条第1項第五号及び第六号イ(これらの規定を同条第2項の規定により読み替える場合を含む。)、第122 条第1項並びに前条第3項第十二号の規定の適用については、当該出入口のある階にあるものとみなす。
建築基準法施行令第123条の2では、主要構造部を準耐火構造とした共同住宅のメゾネット住戸(住戸の階数が2又は3で、出入口が1つの階のみにあるもの)について、一定の条件を満たす場合は、出入口のない階を出入口のある階とみなす特例が設けられています。
この特例により、例えば5階・6階にまたがるメゾネット住戸では、6階部分を令第121条における「5階」とみなすことができるため、本来6階に居室がある建築物に必要となる2以上の直通階段(又は屋外避難階段等)の設置義務が緩和されます。
しかし、この特例は共同住宅を前提とした規定であり、共同生活援助には適用されません。
※ 基準法において 共同生活援助(障害者グル-プホーム)は寄宿舎となります。
竪穴区画
竪穴区画は、建築基準法施行令第112条に基づき、火災時に階段や吹抜けなどの竪穴を通じて火炎・煙が上下階へ拡大することを防止するために設ける防火区画です。
原則として、次のような建築物では竪穴区画の検討が必要となります。
● 耐火建築物又は準耐火建築物等で、3階以上又は地階に居室を有する建築物
● 病院、診療所、児童福祉施設等で一定規模以上の建築物
● 共同住宅、ホテル、旅館、寄宿舎等で一定規模以上の建築物
一方、建築基準法施行令第112条第11項ただし書では、共同住宅の住戸内に設けられた階段又は吹抜け(メゾネット住戸など)について、住戸の階数が3以下であり、かつ住戸内の床面積の合計が200㎡以内である場合には、竪穴区画を設けなくてもよいとする特例が設けられています。
この特例も、共同住宅を前提とした規定であり、共同生活援助には適用されません。
したがって、共同住宅としては適法であるメゾネット住戸であっても、旅館へ用途変更した場合には住戸内階段が竪穴区画の対象となり、新たに竪穴区画を設ける必要が生じる可能性があります。
メゾネット型共同住宅を旅館へ用途変更する場合は、
● 令第123条の2による直通階段の特例が適用されなくなる可能性があること
● 令第112条第11項ただし書による住戸内階段の竪穴区画免除が適用されなくなること
の二点が大きな課題となります。
特に住戸内階段に竪穴区画を新設するためには、防火区画壁、防火設備、防火戸、納まりの変更など大規模な改修が必要となる場合が多く、既存メゾネット住戸では建築計画上・施工上ともに実現が極めて困難なケースが少なくありません。
このため、メゾネット型共同住宅は、共同住宅としては適法であっても、共同生活援助(障害者グル-プホーム)への用途変更は避難規定及び竪穴区画の観点から実現が困難となる可能性が高いと考えられます。
シックハウスの対策ができること
シックハウス対策に係る法令等が、平成15年(2003年)7月1日に施行されました。
それ以前に建てられた共同住宅において24時間換気の対策が求められておりませんでした。
住戸内に自然給気が不備の場合があります。
自然給気等求められていますが、躯体が鉄筋コンクリ-トに給気口を設置することは、難しく対策できない場合があります。
非常用進入口が設置できること
3階以上の階については、道路またはそこから通じる幅員おおむね4m以上の空地に面し、かつ、消防活動上有効に進入可能な開口部(概ね幅75cm以上×高さ1.2m以上の窓等)を有し、必要に応じて、バルコニー等を介して消防隊が安全に接近可能な一室として計画されていることが望ましい。
非常用進入口の適合性
共同住宅においては、各住戸が独立した避難単位として扱われ、バルコニーの連続性や住戸内の開口部配置等により、外壁面における非常用進入口の配置が結果的に成立しているケースが多い。
一方で、寄宿舎(障害者グル-プホーム) 用途に変更した場合は、各個室が利用者による利用単位となり、住戸間のバルコニー等を前提とした横断的な避難・進入経路を計画上見込むことは困難となる。
このため、用途変更後は、各階・各外壁面において、消防活動上有効な進入口が成立しているかを個別に検証する必要がある。
※ 逆三角形のマークが必要となります。
