共同住宅の一部を住戸から旅館に用途変更

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令和8年5月28日 国住指第 164 号
旅館業の許可時における建築基準法への適合確認の徹底について(通知)
が 出されました。
現在までは 200㎡超えた時 用途変更の確認申請を行っていましたが、
今回の通知によって、建築士による適合確認を求められるようになってきたようです。
ということで 民泊から旅館にしたいという相談が多くなりました。

共同住宅の一部を住戸から旅館への用途変更しやすい物件について

共同住宅から旅館への用途変更は、建築基準法及び消防法への適合が必要となるため、物件の条件によって改修内容や事業性が大きく異なります。特に、次の条件を満たす物件は、法適合のための改修が比較的少なく済み、用途変更を行いやすい物件と考えられます。

※ 本内容は一つの整理の考え方であり、必ずしも固定的な正解を示すものではありません。
  実務の蓄積や個別案件の検討を通じて、適宜見直し・改善を行います。
※ 建築基準法に関する特定行政庁及び所轄消防本部との事前協議の上進めてください

用途地域が旅館の建築を認める地域であること。

建築基準法第48条及び別表第二の規定により、旅館は、
第一種住居地域(旅館用途に供する部分の床面積が3,000㎡以下の場合に限る)
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
商業地域
準工業地域
において建築することができます。

したがって、旅館は上記の用途地域以外では、原則として建築 用途変更 することができません。

※ なお、第一種・第二種中高層住居専用地域では、建築基準法第48条の特例許可により建築が認められる場合がありますが、通常では上記の整理となります。

容積率に十分な余裕があること。

共同住宅から旅館へ用途変更すると、共用廊下や共用階段等が容積率の算定対象となる場合があるため、低層であったり、敷地に十分な余裕があり、用途変更後も容積率を超過するおそれのない物件が望ましい

共同住宅の共用廊下及び共用階段については、平成9年(1997年)6月13日に施行された建築基準法改正により、一定の要件を満たすものについて容積率の算定対象から除外(容積率不算入)する制度が導入されました。

一方、旅館については、共同住宅と同様の容積率不算入の取扱いが適用されるものではありません。

そのため、共同住宅の一部を旅館へ用途変更した場合には、旅館部分が利用する共用廊下や共用階段については、共同住宅としての容積率不算入の対象外となる可能性があり、その結果、従来は容積率に算入していなかった面積を容積率に算入しなければならない場合があります。

この場合、建物全体の容積率が指定容積率を超過し、既存不適格ではなく違反建築物となる可能性があるため、用途変更を検討する際には十分な確認が必要です。

実務上は、共用廊下・共用階段のどの範囲を旅館部分に係る共用部分として容積率に算入すべきかについて、建物の利用形態や共用方法に応じた個別の判断が必要となります。

したがって、容積率への影響が明らかにない場合を除き、既存建築物の確認申請図書(確認申請書、副本、面積表、各階平面図等)により当初の容積率算定方法を確認し、用途変更後の容積率を再検証して適法性を確認することが不可欠です。

既存建築物の確認申請図書(確認申請書、副本、面積表、各階平面図等)により
当初の容積率算定方法を確認します

そのため、共同住宅の一部を旅館へ用途変更する場合には、既存確認申請図書は容積率の適法性を確認するための重要な資料であり、実務上は必須資料となります。

3階以上の階でのメゾネット型住戸でないこと。

メゾネット型住戸は、竪穴区画や避難計画への影響が大きく、用途変更に伴う改修が増える可能性があるため、3階以上にメゾネット住戸がない100㎡以下の物件が望ましい。

直通階段の規定

第123 条の2 主要構造部を準耐火構造とした共同住宅の住戸でその階数が2又は3であり、かつ、出入口が一の階のみにあるものの当該出入口のある階以外の階は、その居室の各部分から避難階又は地上に通ずる直通階段の一に至る歩行距離が40 m以下である場合においては、第119 条、第121 条第1項第五号及び第六号イ(これらの規定を同条第2項の規定により読み替える場合を含む。)、第122 条第1項並びに前条第3項第十二号の規定の適用については、当該出入口のある階にあるものとみなす。

建築基準法施行令第123条の2では、主要構造部を準耐火構造とした共同住宅のメゾネット住戸(住戸の階数が2又は3で、出入口が1つの階のみにあるもの)について、一定の条件を満たす場合は、出入口のない階を出入口のある階とみなす特例が設けられています。

この特例により、例えば5階・6階にまたがるメゾネット住戸では、6階部分を令第121条における「5階」とみなすことができるため、本来6階に居室がある建築物に必要となる2以上の直通階段(又は屋外避難階段等)の設置義務が緩和されます。

しかし、この特例は共同住宅を前提とした規定であり、旅館用途には適用されません。

そのため、5階・6階にまたがるメゾネット住戸を旅館へ用途変更した場合は、令第123条の2の特例を受けることができず、令第121条の規定に基づく直通階段の要件を満たさない可能性があります。

このため、5階以上にまたがるメゾネット住戸を旅館として使用することは、避難規定上、大きな課題となる可能性があります。

竪穴区画

竪穴区画は、建築基準法施行令第112条に基づき、火災時に階段や吹抜けなどの竪穴を通じて火炎・煙が上下階へ拡大することを防止するために設ける防火区画です。

原則として、次のような建築物では竪穴区画の検討が必要となります。

● 耐火建築物又は準耐火建築物等で、3階以上又は地階に居室を有する建築物
● 病院、診療所、児童福祉施設等で一定規模以上の建築物
● 共同住宅、ホテル、旅館、寄宿舎等で一定規模以上の建築物

一方、建築基準法施行令第112条第11項ただし書では、共同住宅の住戸内に設けられた階段又は吹抜け(メゾネット住戸など)について、住戸の階数が3以下であり、かつ住戸内の床面積の合計が200㎡以内である場合には、竪穴区画を設けなくてもよいとする特例が設けられています。

この特例も、共同住宅を前提とした規定であり、旅館には適用されません。

したがって、共同住宅としては適法であるメゾネット住戸であっても、旅館へ用途変更した場合には住戸内階段が竪穴区画の対象となり、新たに竪穴区画を設ける必要が生じる可能性があります。

メゾネット型共同住宅を旅館へ用途変更する場合は、

● 令第123条の2による直通階段の特例が適用されなくなる可能性があること
● 令第112条第11項ただし書による住戸内階段の竪穴区画免除が適用されなくなること

の二点が大きな課題となります。

特に住戸内階段に竪穴区画を新設するためには、防火区画壁、防火設備、防火戸、納まりの変更など大規模な改修が必要となる場合が多く、既存メゾネット住戸では建築計画上・施工上ともに実現が極めて困難なケースが少なくありません。

このため、メゾネット型共同住宅は、共同住宅としては適法であっても、旅館への用途変更は避難規定及び竪穴区画の観点から実現が困難となる可能性が高いと考えられます。

シックハウスの対策ができること

シックハウス対策に係る法令等が、平成15年(2003年)7月1日に施行されました。
それ以前に建てられた共同住宅において24時間換気の対策が求められておりませんでした。
住戸内に自然給気が不備の場合があります。
自然給気等求められていますが、躯体が鉄筋コンクリ-トに給気口を設置することは、難しく対策できない場合があります。

非常用進入口が設置できること

3階以上の階については、道路またはそこから通じる幅員おおむね4m以上の空地に面し、かつ、消防活動上有効に進入可能な開口部(概ね幅75cm以上×高さ1.2m以上の窓等)を有し、必要に応じて、バルコニー等を介して消防隊が安全に接近可能な一室として計画されていることが望ましい。

非常用進入口の適合性

共同住宅においては、各住戸が独立した避難単位として扱われ、バルコニーの連続性や住戸内の開口部配置等により、外壁面における非常用進入口の配置が結果的に成立しているケースが多い。

一方で、旅館用途に変更した場合は、各客室が不特定多数の宿泊者による利用単位となり、住戸間のバルコニー等を前提とした横断的な避難・進入経路を計画上見込むことは困難となる。

このため、用途変更後は、各階・各外壁面において、消防活動上有効な進入口が成立しているかを個別に検証する必要がある。

※ 逆三角形のマークが必要となります。

延べ面積300㎡以上で、自動火災報知設備又は共同住宅用自動火災報知設備等が設置されていることが一般的な共同住宅であること。

延べ面積300㎡以上の物件では、自動火災報知設備の配線が既に施工されている可能性が高く、既設配線を有効活用しながら受信機や感知器等の機器を旅館用途に適合したものへ更新することで、工事費及び工期の縮減が期待できます。一方で、建物の延べ面積が大きくなるほど、共用廊下や共用階段等の共用部分における消防設備や建築設備の改修範囲が広がり、工事費が増加する傾向があるため、既設設備を有効活用できる比較的コンパクトな共同住宅が、用途変更に適した物件と考えられます。

共同住宅では、一定の要件を満たす「特定共同住宅等」に該当する場合、総務省令第40号に基づく特例により、住戸内の自動火災報知設備(自火報)は住宅用火災警報器の設置をもって代えることができます。

また、共用廊下などの共用部分についても、建物の構造や防火区画等が一定の基準を満たす場合には、自動火災報知設備の感知器の設置が免除される場合があります。

住戸内自火報の特例(共同住宅特例基準)

総務省令第40号による「特定共同住宅等」の規定を満たした場合、住戸内の自動火災報知設備の代わりに「住宅用火災警報器」の設置で済む緩和が適用されます。

共用部分(廊下等)の自火報の特例

共用部分でも、一定の構造と防火設備を有していれば感知器の設置が免除される場合があります。

共同住宅の一部を旅館用途に変更した場合

共同住宅の一部を旅館用途に変更した場合は、旅館部分については共同住宅に適用されるこれらの特例が適用されないことがあり、消防法令に基づき自動火災報知設備の設置が必要となります。

この場合の設置範囲は、旅館部分の規模や配置、防火区画の状況、消防法施行令第8条による区画(令8区画)の成立の有無、建物全体の用途構成等を総合的に判断して決定されます。

そのため、実務上は次の二つのケースが考えられます。

共同住宅部分の特例が維持される場合

● 共同住宅住戸内:住宅用火災警報器(自火報免除)
● 旅館部分:自動火災報知設備を設置
● 旅館利用共用部:自動火災報知設備を設置

共同住宅部分の特例が適用できない場合

● 共同住宅住戸内:自動火災報知設備を設置
● 旅館部分:自動火災報知設備を設置
● 共用部分:自動火災報知設備を設置

したがって、共同住宅の一部を旅館へ用途変更する場合は、「旅館用途になったから建物全体に自動火災報知設備が必要」と一律に判断することはできません。

最終的な設置範囲は、防火区画の方法、令8区画の成立状況、消防法令及び所轄消防本部の運用を踏まえて個別に判断されるため、所轄消防本部との事前協議を行うことが重要です。

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この記事を書いた人

kengoimai

イマイケンゴ
愛知県名古屋市で今井賢悟建築設計工房という建築設計事務所を営んでいます。ハウスメ-カ-やディベロッパ-に勤めていたけれど、30半ばにして、フリ-ランスとなってしまいました。
なにとぞよろしくお願します!!