名古屋市障害者支援課より「障害福祉サービス事業所における建築基準法の適用について」の通知が出されて以降、事業所の規模に関わらず、建築基準法の遵守が徹底されています。
床面積が200㎡を超える場合の「用途変更の確認申請」が必要なのは当然ですが、200㎡以下の場合であっても、建築基準法(防火区画、内装制限、避難経路、階段寸法等)の基準そのものは完全に適用されます。 そのため、名古屋市からの通知に基づき、指定申請等の審査において建築士による法適合確認が求められています。
現在、実務に携わる専門家の方々や、すでに共同生活援助(障害者グル-プホーム)を運営されており、新たに次の事業所展開を検討されている事業者様 また新規の事業者様から、法適合に関するご相談を多くいただいております。
そこで、具体的なチェックポイントや留意すべき法規について、以下の通りまとめました。
※ 本内容は一つの整理の考え方であり、必ずしも固定的な正解を示すものではありません。
実務の蓄積や個別案件の検討を通じて、適宜見直し・改善を行います。
※ 専門家である建築士 建築基準法に関する特定行政庁 所轄消防本部と協議の上進めてください
一戸建ての住宅を共同生活援助(障害者グル-プホーム)に用途変更しやすい物件について
一戸建て住宅から旅館への用途変更では、建築基準法及び消防法への適合が必要となるため、既存建物の条件によって改修内容や事業性が大きく異なります。用途変更に伴う改修範囲や工事費を抑えるためには、現地調査の段階で法適合性や改修のしやすさを確認し、用途変更に適した物件を選定することが重要です。特に、次のような条件を満たす建築物は、比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
※ 本内容は一つの整理の考え方であり、必ずしも固定的な正解を示すものではありません。
実務の蓄積や個別案件の検討を通じて、適宜見直し・改善を行います。
※ 専門家である建築士 建築基準法に関する特定行政庁 所轄消防本部と協議の上進めてください
市街化調整区域より市街化区域
市街化調整区域内の既存が住宅の場合は、新築時に「住宅」としてのみ建築が許可されているケースがほとんどです。これを共同生活援助に変更することは、都市計画法上の「用途の変更」に該当し、原則として規模にかかわらず 都市計画法43条に基づく行政(名古屋市等)の許可が必要となります。
建築基準法への適合状況が確認できること。
建築確認済証、検査済証及び確認図面等が保存されており、既存不適格事項や違反建築がない、又は容易に是正できる建築物は、用途変更手続を円滑に進めることができます。
比較的新しく、適法性の確認が容易な建築物であること。
比較的新しい建築物は、建築基準法及び消防法への適合性を確認しやすく、確認済証・検査済証や設計図書等の資料も整備されていることが多いため、用途変更に伴う法適合の確認や改修計画を円滑に進めることができます。一方、築年数の古い建築物では、既存不適格事項や法令不適合箇所が確認される場合があり、比較的新しい建築物が比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
敷地及び建物規模に十分な余裕があること。
共同生活援助への用途変更に伴い、避難階の出口(玄関)から道路までの屋外通路を確保する必要があるため、有効幅員1.5m(条件により0.9m)の屋外通路を確保できる敷地であること。また、用途変更後も各種法令に適合できるよう、敷地及び建物規模に十分な余裕がある建築物が比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
道路後退(セットバック)部分に、既存の工作物が残っていない建築物であること
既存建物が建築基準法第42条第2項に基づく道路(2項道路)に面している場合、道路の中心線から後退した「道路後退(セットバック)線」が法律上の道路境界線となります。
名古屋市内の市街地では比較的少ないケースではありますが、この道路後退線から道路側のスペースに、既存のコンクリートブロック塀、擁壁、門扉、あるいは階段などの工作物が残っている物件は避けるべきです。
一戸建て住宅から共同生活援助(障害者グル-プホーム)への用途変更を行う際、床面積の規模にかかわらず、この道路後退部分にある工作物は「道路内の建築・工作物の制限(法第44条)」に抵触するため、確認申請や法適合確認の段階で、原則としてすべて解体・撤去することが求められます。
道路後退が必要な道路に面していないか、あるいは後退部分に一切の工作物が存在しない建築物を選ぶことが極めて重要であり、比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
既存建物が防火・避難規定に対応しやすいこと。
小規模な一戸建て住宅であっても、共同生活援助(障害者グループホーム)へ用途変更する場合は、原則として防火上主要な間仕切壁が必要となります。しかし、既存住宅において防火上主要な間仕切壁を新たに設置することは、間取りや構造上、現実的に困難な場合が少なくありません。
そのため、建築基準法の特例を活用した計画を前提とすることが多くなります。道路に面した避難上有効なバルコニーの存在や、室内及び避難経路の壁・天井の不燃化状況など、個別の条件の組み合わせによって、特例による対策を講じられる可能性が高く 比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
二階建て以下の建築物であること。
共同生活援助(障害者グループホーム)において 三階建て以上の建築物では、竪穴区画への適合が必要となる場合があり、用途変更に伴う改修範囲や工事費が大きくなる傾向があります。そのため、竪穴区画に係る改修を必要としない二階建て以下の建築物は、比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
延べ面積200㎡以下の三階建て 階段室を構成しやすい間取りであること。
延べ面積200㎡以下の三階建て一戸建て住宅では、2019年(令和元年)の建築基準法改正により新設された建築基準法施行令第112条第13項(小規模な竪穴区画)の適用を受けることができる場合があります。三階建ての一戸建て住宅は準耐火建築物(45分)であることを前提として、階段室を構成できる間取り、又は比較的容易に階段室を構成できる間取りであれば、一階から三階までの階段室に面する開口部を10分間防火設備へ変更することにより、竪穴区画へ適合できる場合があります。そのため、既存の間取りが階段室を構成しやすい建築物は、共同生活援助(障害者グループホーム)へ比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
公共下水道に接続されている建築物であること。
一戸建て住宅では、5人槽や7人槽などの小規模な浄化槽が設置されていることが多く、共同生活援助(障害者グル-プホーム)への用途変更により定員が増加すると、処理能力が不足し、浄化槽の入替えや増設が必要となる場合があります。そのため、公共下水道に接続されている建築物は、排水設備の改修が少なく済み、工事費及び工期を抑えられることから、比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
排煙上有効な開口部を確保しやすい建築物であること。
一戸建て住宅(二階建て延べ面積200㎡以下)では、排煙上有効な開口部が求められていないため、吹抜けや勾配天井など天井の高い空間であっても、天井付近に排煙上有効な開口部面積を満たす開口部が設けられていない場合があります。また、FIX窓が多い建築物や、低い位置にのみ開口部が設けられている建築物では、排煙上有効な開口部の確保が困難となり、開口部の新設や改修が必要となる場合があります。このため、天井付近に排煙上有効な開口部面積を確保できる建築物は、比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
最初から独立した個室が確保されている建築物であること
共同生活援助(障害者グループホーム)では利用者の個室を確保していく必要がありますが、このような二間続きの部屋を壁で仕切ってしまうと、奥の部屋の採光(窓の光)が建築基準法上、全く取れなくなる可能性があります。
避難経路さえ確保されていればリビングと続き間になっていること自体は問題ありませんが、個室として区切った瞬間に隣地境界線が近い場合において奥の部屋の採光が完全に遮断される可能性があります。
つまり、二間続きを区切る間取りの物件は、そもそも共同生活援助(障害者グループホーム)への用途変更ができない可能性が非常に大きくなります。 そのため、確実かつ安全に計画を進めるためにも、二間続きの間取りは最初から候補から外し、個々の部屋がはじめから独立して外窓(採光窓)を持っている建築物が、比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
防火性能を備えた建築物であること。
準防火地域に建築される木造二階建て住宅では、延焼のおそれのある部分の開口部が防火設備であること、外壁が防火構造であること、軒裏が防火構造(実態は準耐火構造)であることが求められます。適法に建築された建築物であれば、一般的にはこれらの防火性能が確保されています。一方、築年数の古い建築物では、建築時の法令やその後の改修状況などにより、現行の防火性能を満たしていない仕様となっているものも少なくありません。比較的新しい建築物は、これらの防火性能が確保されている場合が多く、用途変更に伴う法適合の確認を円滑に進めやすいことから、比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
階段が共同生活援助(障害者グル-プホーム)の基準に適合しやすい形状であること。
築年数の古い一戸建て住宅の階段は、急勾配で踏面が狭いものが多く、共同生活援助への用途変更に際して、寸法や踊場の形状が建築基準法に適合しないケースが多々あります。
特に、回り階段の屈曲部を「3段まわり」で構成している場合は、内側30cm位置での有効踏面(法定寸法)が不足する可能性が高く、基準を満たすことができない可能性があります。
階段に関しては一定の条件を満たす場合に適用できる緩和規定もあるため、その適用の可否について確認することが望まれます。
そのため、既存の階段が比較的緩やかで、回り部分を3段で構成していないなど、共同生活援助(障害者グループホーム)の基準に適合しやすい建築物は、用途変更を円滑に進めやすく、比較的用途変更を行いやすい物件と考えられます。
※ 本内容は一つの整理の考え方であり、必ずしも固定的な正解を示すものではありません。
実務の蓄積や個別案件の検討を通じて、適宜見直し・改善を行います。
※ 専門家である建築士 建築基準法に関する特定行政庁 所轄消防本部と協議の上進めてください
